気づかず放置が命取り?甲状腺機能低下!

現代人はとにかく忙しい生活を送っています。ストレス疲れが蓄積したり、睡眠時間が不足したりすると、いつもだるいとか、なかなか疲れが取れないといったことになります。単なる疲労であれば、十分な休息を取ることで解消されるものですが、普段見過ごされがちな意外な病気が隠れていることもあります。

その中の一つが甲状腺機能低下症です。特に女性に多いといわれる病気ですが、機能低下が軽度の場合、だるさ疲労感など、どの症状もあきらかではないため診断の決め手とならず、長期間見逃されていることもあります。

この記事では甲状腺機能低下症とはどんな病気なのか?どんな対策を取ることができるのか?といった点を取り上げたいと思います。

甲状腺低下症とは?

結論から先に述べると、甲状腺低下症とは甲状腺ホルモンが不足し、新陳代謝が衰えてしまう病気の事です。

では、まず甲状腺とはなんでしょうか?甲状腺とはからだ全体の新陳代謝を促すホルモン(甲状腺ホルモン)を分泌するところです。喉 ぼとけの両側にあって、ラグビーボールのような形をしています。左右に1個ずつあり、真ん中でつながっています。甲状腺ホルモンは生命維持不可欠で、このホルモンがなくなると1~2カ月ぐらいしか生きられないといわれています。

ですから甲状腺ホルモンの分泌が低下すると身体全体に様々な不具合が出てくることになります。例えば、倦怠感、眠気、物忘れ、肌のかさつき、むくみ、脱毛、便秘などの症状が考えられますが、どれも病気ではなく加齢疲労の蓄積など他の原因と勘違いされることが多く見過ごされることも少なくありません。

そうしたなかで、甲状腺低下症の特徴の1つが「汗をかかないこと」です。これは、甲状腺の機能低下に伴って体温調節機能が低下することによって引き起こされるものと考えられますが、いままではよく汗をかいていたのに、急に汗をかきにくくなった、夏場なのに汗をかかない、さらに疲労感だるさをともなう場合は、甲状腺低下症を疑う必要があります。

甲状腺低下症は特に女性に多く、10~20人1人といわれています。とくに、中年期以降に発症しやすいので、40歳頃からは注意する必要があります。

甲状腺低下症の原因は?

甲状腺低下症の原因として挙げられるのは、①甲状腺そのものの働きが低下、②甲状腺を刺激するホルモンの不足によって働きが低下、③甲状腺ホルモンに対する反応が鈍くなり機能しなくなる、などがあります。

このうちの主な原因として挙げられるのが、①の甲状腺そのものの働きの低下で、その多くが慢性甲状腺炎(橋本病)に起因するものです。慢性甲状腺炎は、リンパ球が甲状腺を異物として認識し、甲状腺組織を攻撃、破壊する病気(自己免疫疾患)です。

甲状腺の機能にはもともと余裕があるので、慢性甲状腺炎になったとしても、甲状腺ホルモンの分泌には影響が及ばないこともありますが、慢性甲状腺炎が進行すると甲状腺ホルモンの分泌が少なくなり体に症状が出てくるわけです。これがつまり、甲状腺機能低下症です。

長期間の放置は危険

これまでみてきたように、甲状腺低下症の症状ははっきりしない場合が多く、これといった決め手がないので、病院への受診を見送ってしまったり、一般の内科クリニックなどで対症療法的な治療が継続され、直接的原因である甲状腺機能低下症に対して十分な処置が施されなかったりするケースがあります。

注意点として、長期間に渡って甲状腺低下症を放置すると、心活動の低下に伴う徐脈や不整脈、または動脈硬化の早期進展による重篤な心血管疾患脳血管疾患の発症に至る可能性があり、余命を縮めることにもなりかねません。

上記に示したような症状が継続する場合は、ただの疲れと決めつけずに必ず内科を受診すること、また既にかかりつけのお医者さんがいるなら、追加の血液検査の必要性についてよく相談することが非常に重要です。

また妊娠中に甲状腺機能が低下していると流産の危険性が高くなります。慢性甲状腺炎の人は普段甲状腺機能が正常であっても、妊娠すると低下しやすい傾向にあるので、妊娠が分かったら早期に甲状腺機能を再確認するようにしましょう。

日常生活で気を付けたいこと

では、甲状腺低下症の対策として普段どんなことに気を付けることができるでしょうか?一つの点としてヨードの取りすぎに注意する必要があります。ヨードは、甲状腺ホルモンの重要な成分なのですが、実際に甲状腺ホルモンを産生するために必要とされるヨードは1日0.05~0.15mg程度と微量です。逆にヨードを過剰摂取すると甲状腺機能低下症を起こすことがあります。

一般に日本の食事には、コンブ、ワカメ、ノリ、ヒジキなどヨードを多くふくむものが多いので、通常の食事からとる程度で十分です。普段の食事以外でコンブなどの海藻類を多く食べたり、ヨードサプリメントを使用していたりする方で甲状腺機能低下症の症状がみられる場合は注意が必要です。

まとめ

この記事では甲状腺低下症とは何か、また長期間放置してしまう危険性を見てきました。忙しい生活を送っているとついつい見過ごしてしまいがちですが、長期間放置すると健康に重大な影響を及ぼしてしまう可能性があります。

原因がわかれば対策もわかるものです。最近カラダがだるいとか、汗をかかなくなったなどこの記事で取り上げた症状が長期間続く場合は、サインを無視せず、専門家に相談するようにしましょう。甲状腺機能低下症に関わらず身体がだるい疲れやすいなどの症状がある時はお気軽に当院までご相談ください。